笙の竹管の考察

笙の管は竹でできています。古民家の囲炉裏の上などで100年以上も燻されたものが最高の品質です。当然ながら、そのようなものは時と共にどんどん無くなってゆきます。いい笙はもうできないんじゃないか。一介のアマチュア笙吹きにすぎませんが、私は本当に心配です。

笙の管は共鳴装置です。音をより良く共鳴させるためには「軽く」て「剛性(弾性係数)が高く」なければなりません。竹は何億個という植物細胞の構造体であり、正に自然の傑作です。更にこれを燻すことにより、細胞の水分や官能基が飛び去って、純粋なセルロースないしカーボンに近づくので(炭素化には1000℃以上が必要なのでまだまだ遥かですが)、比剛性(軽くて剛い目安となる指数)がより高くなっているのだと思われます。ちなみにストラディバリウスのバイオリンも、300年を経てそういう機序が働いているのではないでしょうか。

工業材料で作れないか。比剛性の高い材料といえば、ジェット機などに採用のアルミリチウム合金があります。が、笙の管には「演奏中に水滴がつかないよう、息中の湿気を吸収し保持し徐放する」という機能も必要です。金属やガラスは表面が緻密なので、こういう芸当は全くできません。

そのためには、「管の内側表面に水蒸気分子を捕まえるレベルの細かい穴」が分散していなくてはなりません。竹はもともと植物ですから、細胞内外に水蒸気を出し入れできますね。

木材なども、この点では笙の管として望ましいです。けれども穴だらけの材料ですと、必然的に「剛い」という性質とは相反します。軽くて剛い人工材料でこれを実現するためには、高度な技術とコストが要求されそうですね。

スペースシャトルの主翼前縁やレース用バイクのブレーキディスクに使われる、グラファイト繊維をカーボン樹脂で固めたカーボンカーボン複合材料。あるいは、カーボンFRPのような強化プラスチック管の内面に多孔質の表面層を形成した材料。究極的にはカーボンナノチューブ。「軽く」て「剛い」点では理想的です。このようなハイテク素材を用いて、楽器メーカーさんには、どうか笙を開発し販売して頂きたいと願います。

ちなみに、カーボン複合材料のバイオリンやチェロは市販されており、黒光りして音もなかなか、プロ奏者にも賞賛者がいるとのことです。カーボンのチェロ弓ならヤ○ハさんも製作しています。

http://www.youtube.com/watch?v=J_gI3chGtww
http://www.youtube.com/watch?v=X-A7K4TPT2k

ST

コメント

タイトルとURLをコピーしました