[笙のリードの考察]で、「亜鉛は安い」「錫(すず)は高い」と書きました。
では実際どのくらい違うものか。
LME(ロンドン金属取引所)各種地金の直物価格
金と銀はニューヨーク商品取引所の期近物価格
いずれもUSドル/kgに換算
銅 9.024
亜鉛 2.402
錫 26.180
鉛 2.3075
アルミ 2.3255
ニッケル 24.050
金 45278
銀 956.42
鉄鋼(建築用グレード?) 0.505
金銀はダントツ高く、鉄はメチャ安いです。非鉄の代表である銅はそれなりの価格ですね。「黄銅=亜鉛」と「青銅=錫」の差もはっきりしています。
銃弾の薬莢は「カートリッジ黄銅」という、主として銅90亜鉛10の黄銅です。軍の演習場の近くで使用済み薬莢を拾い集めて売ると、結構な儲けになることが判ります。一方、「火の見やぐらの半鐘」が頻繁に盗まれたことがありましたが、こちらは銅錫合金である青銅製です。屑鉄は見向きもされないが、ニッケルの入っているステンレス鋼(18クロム8ニッケル、残りは鉄)だと盗っ人に狙われるわけです。彼らも良く知っています。
昔(昭和30~40年代)は、100円玉は銀貨(銀60銅30亜鉛10)、50円玉はニッケル貨でした。だから50円玉は磁石にくっつきました。オイルショック(昭和48年)の資源インフレで銀もニッケルも暴騰し、お金として使うより鋳潰して売る方が得という勢いだったので、どちらも改鋳されてしまいました。今は共に白銅貨(銅75ニッケル25)です。
その後500円玉が登場しました。これも初代は白銅貨でしたが、更にニッケルが高騰したので、500ウォン貨がらみの贋金騒動の際に改鋳され、今では洋銀(洋白)貨(銅72亜鉛20ニッケル8)のありさまです。
このように、いくら「錫を使えば硬くて粘り強くなり、いい音が出る」と判っていても、原料の値段が10倍も違えば、どんな楽器にも採用するわけにはゆきません。工業製品として人さまに買っていただくための宿命です。「リード一級品」と「リード特級品」の差はこんなところにあったのですね。
11月30日アップの「笙の竹管の考察」で言及したカーボン複合材料にしても、普通なら楽器に使える値段の材料ではありません。でも今は良質の竹が希少となり、いい楽器ともなれば100万円以上は当たり前、という業界です。
こうなると、カーボン製の管で90万円の笙を作る、という発想が現実味を帯びてきます。現にカーボン製のチェロは80万円で販売されていますし。でもそのためには笙吹きが頑張って、笙人口をチェロ人口くらいに増やさなければなりませんね。 KJ ■
コメント
さてさて、カーボン製のハープも販売されてきました。
http://takada-harp.com/celticharp/item/bluelight.html
笙もいつかは・・・、無理か。
昨今の円高でカーボン製のバイオリン・チェロ・ハープ(いずれも輸入品)が驚くほど安くなりました。
2011年2月17日、ドル=83.50円で換算
Luis and Clark, luisandclark.com(アメリカ)
カーボンバイオリン 5539ドル≒46万円
カーボンチェロ 7139ドル≒60万円
CAMAC, camac-harps.com(フランス)
(日本代理店:高田ハープサロン)
カーボンハープ≒57万円
カーボン笙もいつかは≒50万円で、・・・って無理か。