笙の材料の価格

[笙のリードの考察]で、「亜鉛は安い」「錫(すず)は高い」と書きました。
では実際どのくらい違うものか。

★ 現地時間2010年12月7日
  LME(ロンドン金属取引所)各種地金の直物価格
  金と銀はニューヨーク商品取引所の期近物価格
  いずれもUSドル/kgに換算
   銅            9.024
   亜鉛           2.402
   錫            26.180
   鉛            2.3075
   アルミ           2.3255
   ニッケル         24.050
   金         45278
   銀           956.42
   鉄鋼(建築用グレード?)  0.505

 金銀はダントツ高く、鉄はメチャ安いです。非鉄の代表である銅はそれなりの価格ですね。「黄銅=亜鉛」と「青銅=錫」の差もはっきりしています。

 

 銃弾の薬莢は「カートリッジ黄銅」という、主として銅90亜鉛10の黄銅です。軍の演習場の近くで使用済み薬莢を拾い集めて売ると、結構な儲けになることが判ります。一方、「火の見やぐらの半鐘」が頻繁に盗まれたことがありましたが、こちらは銅錫合金である青銅製です。屑鉄は見向きもされないが、ニッケルの入っているステンレス鋼(18クロム8ニッケル、残りは鉄)だと盗っ人に狙われるわけです。彼らも良く知っています。

 

 昔(昭和30~40年代)は、100円玉は銀貨(銀60銅30亜鉛10)、50円玉はニッケル貨でした。だから50円玉は磁石にくっつきました。オイルショック(昭和48年)の資源インフレで銀もニッケルも暴騰し、お金として使うより鋳潰して売る方が得という勢いだったので、どちらも改鋳されてしまいました。今は共に白銅貨(銅75ニッケル25)です。

 

 その後500円玉が登場しました。これも初代は白銅貨でしたが、更にニッケルが高騰したので、500ウォン貨がらみの贋金騒動の際に改鋳され、今では洋銀(洋白)貨(銅72亜鉛20ニッケル8)のありさまです。

 このように、いくら「錫を使えば硬くて粘り強くなり、いい音が出る」と判っていても、原料の値段が10倍も違えば、どんな楽器にも採用するわけにはゆきません。工業製品として人さまに買っていただくための宿命です。「リード一級品」と「リード特級品」の差はこんなところにあったのですね。

 11月30日アップの「笙の竹管の考察」で言及したカーボン複合材料にしても、普通なら楽器に使える値段の材料ではありません。でも今は良質の竹が希少となり、いい楽器ともなれば100万円以上は当たり前、という業界です。

 こうなると、カーボン製の管で90万円の笙を作る、という発想が現実味を帯びてきます。現にカーボン製のチェロは80万円で販売されていますし。でもそのためには笙吹きが頑張って、笙人口をチェロ人口くらいに増やさなければなりませんね。 KJ ■

コメント

  1. KJ より:

    さてさて、カーボン製のハープも販売されてきました。
    http://takada-harp.com/celticharp/item/bluelight.html
    笙もいつかは・・・、無理か。

  2. KJ より:

    昨今の円高でカーボン製のバイオリン・チェロ・ハープ(いずれも輸入品)が驚くほど安くなりました。

    2011年2月17日、ドル=83.50円で換算
    Luis and Clark, luisandclark.com(アメリカ)
    カーボンバイオリン 5539ドル≒46万円
    カーボンチェロ    7139ドル≒60万円
    CAMAC, camac-harps.com(フランス)
    (日本代理店:高田ハープサロン)
    カーボンハープ≒57万円
    カーボン笙もいつかは≒50万円で、・・・って無理か。

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